個展 「祭り」    銀座ニコンサロン・大阪ニコンサロン 1975年

 

祭りは、日常生活のなかに、突然現れる異常な世界です。
人々は晴れ着を着て、晴れがましい気分で祭りに参加します。だから、祭りのある町全体がそんな雰囲気になります。
そしてわれわれアマチュア写真家は、その祭りの珍しさとか、華やかさにひかれて祭りを写すというわけです。
しかし、その珍しさだけで写すだけでなく、もう少し深く考えて、祭りはその地方の長い歴史のなかではぐくまれてきたものですから、その土地の風土をもっともよく表しているものです。
そのようなことも頭の中において写せば、視野も広がって内容のある作品ができることになろうかと思います。
さらに、祭りが終わったあとの、むなしさや哀しさが漂うものですが、それはどういうことだろうかということから祭りを見れば、特定の祭りにこだわる必要もなく、写す自分の内面的なものを、祭りを素材にして表現することができるというわけです。
祭りの行列を追うだけ出なく、祭りの町や村のたたずまい、祭りの周辺の人々や物など、自分の心にふれたものを素直に撮るように心がければ、祭りには写すものがいっぱいあると言えます。

(木村仲久「私の写真術・祭を素材に自分の心を素直に表現」1995年/フォトアサヒ9月号から)

◎写真は順次、追加していきます。