民家は長い年月の間に、代々の人たちが暮らした生活の匂いがしみつき、深く沈殿し発酵していて、それが私の写欲をそそるのです。

それぞれの家にそれぞれの歴史があり、家の人の話を伺いながら眺めると、家が生き物のように見えてきます。そしてそこにすんでいる人たちも、その家に同化して、その一部になってしまっているように思えてくるのです。

(写真集「静岡の民家」あとがきより)